p r a y  b a l l ! 

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空に吸い込まれていくようなボール。
あぁ、青春だ。
あたしは勝手にそんなことを思うのだ。
今は、夏なんですけれども。
青春って、春より夏っぽい。

「青春だよね」
あぁ、空が青い。
「は?何言ってんの?」
あたしのさわやかな発言を間髪入れずにつぶす野球部員その1。
「いや、青春っぽくない?」
「こっちは部活ですー」
ベンチに腰を下ろして水を飲む。
「さぼってんじゃん」
「休憩だよ。休憩」

ベンチに座る男女。
絵になってくれてれば助かるけれども、そうなのかはいまいちわからない。

「キャッチボールしよう」
「…は?」
いきなり立ち上がったあたしに彼はめいっぱい不思議そうな顔をする。
「聞こえなかった?きゃっち・ぼーる」
「てか、お前できんの?」
「やるの」
真顔でそういうと、2つのグローブを持ってきてくれた。

「よし!どんとこーい!」
「おかしいぞ、それ」

ひゅんっとまっすぐにボールがあたしに向かってくる。
手をのばすと、きれいにグローブにおさまった。

おぉ。やればできんじゃん。あたし。

「魔球!!」

意味もなくそう言ってぶつけるように投げる。
そのつもりが、計算外なカーブを描く。

「下手くそ」

あたしの魔球を楽々とキャッチして、投げ返す。
ぱしっといい音であたしの手におさまる。

「ミラクルショット」

なぜかいちいち名づけて投げる。

「ショットってゴルフじゃねーの?」

あきれながらもキャッチボールは続く。

「阪神!」

「チームだし」

「セカンド!」

「お前バカ?」

思ったのは、あたしがうまいんじゃなくって。
奴の投げたボールのコントロールがよいからあたしの手におさまるだけで。
あたしの適当なボールも無理矢理キャッチしてくれるからで。

相性いいんじゃないの?
…あいつはうまいから誰とキャッチボールしてもうまくいくのか。

「ばーか!」

「んだよそれ!!」

返すボールがひゅんっと速くなる。
おい、ボールに怒りを込めるな。

「あーほ!」

「どっちがだよ!」

あたしも、力いっぱい投げる。

「好きだー!!」

ねぇ。
聞こえた?


「…は?」

キャッチしそびれた奴の顔に、あたしはにやっと笑う。

「ボールとってこーい!!」

走っていく後ろ姿から、視線を空に上げる。
あぁ、空は青い。

あたしは、ベンチにそっとグローブを置いて走った。

ねぇ。
これであたしのことがちょっとでも気になった?



2003/09/28

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