コ エ ノ マ ホ ウ
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遠い昔のとある国でのおはなし。
そこには歌をうたうことが大好きな王子がいました。

王子は、毎日歌をうたっていました。
どこにいても、なにをしているときも。
王子の歌声はとても澄んでいてきれいでした。
しかし、王子は歌に夢中でお勉強をしなくなってしまったのです。

王様は考えました。
王子はこのままじゃりっぱな王様になれないのではないか。
そして、王様は王子に歌うことを禁止したのです。

歌えなくなった王子には、つまらない日々が続きました。
山の上にあるお城からはたのしそうな街の様子が見えました。
王子は思ったのです。
あの街の中なら、歌をうたっても怒る人はいない。

次の日、王子はこっそりとお城を抜け出しました。
そして、街へと行きました。
街の公園で王子が歌うと、みんなその声に耳を傾けてくれました。
王子は歌うことがたのしくて仕方ありません。

そんな日々が続いたある日のことです。
急ぎ足で公園に向かう王子は、女の子とぶつかってしまいました。
「ごめんね!だいじょうぶ??」
王子が彼女に声をかけると、彼女はにっこり笑っていいました。
「あなた、いつもここで歌っている人でしょう?」
「どうしてわかるの?」
「声でわかるのよ」
彼女は、手で何かをさがしていました。
「なにをさがしているの?」
「杖よ」
「杖?」
「どこかにない?」
「あった!」
王子は、後ろに転がっている杖を拾い上げ、彼女にみせました。
「ありがとう」
彼女は手をのばすけど、なかなか杖に触れられません。
王子はようやく気がつきました。
彼女は目が見えないのです。
王子が杖を手渡すと、彼女は笑顔を見せてくれました。

それからというもの、王子の生活は変わりました。
こっそり抜け出すのは、彼女に会いたいためでした。

「あなたの歌声がすごく好きなの」
「ありがとう」
そう言ってくれる彼女に王子はだんだん恋心を抱くようになりました。

「あなたはなにをしているの?」
「えーと・・」
王子は自分が王子なのだと言うことができませんでした。
「ぼくは、ただの靴屋の息子だよ」
「わたしの家はお花屋さんなのよ」
「花屋?」
「えぇ」
目が見えないのに?王子はそう聞きたい気持ちを飲み込みました。
「お花は、香りでわかるのよ」
女の子はふわりと笑いました。
お花のような、きれいな笑顔でした。

王子の幸せな生活は続きませんでした。
お城の家来が王子が街へいっていることに気づいてしまったのです。
王子は、街へいくのを禁止されました。
すると、王子はみるみるうちに元気がなくなってしまったのです。
かわいそうに思った王様は、歌をうたうことだけを許しました。
でも、王子に元気は戻りません。

そんなある日、王子のところに小さな小鳥がやってきました。
「どうしたの?」
あわてる小鳥を見て、王子は聞きました。
王子には動物の声が聞こえるのです。
「あの女の子がいなくなってしまったの!」
「えぇ?!」
王子はどうしたらよいかわかりませんでした。
街にも行けない。心配で心配で苦しみました。

次の日のことです。また小鳥がやってきました。
「街の人が、王子のことをさがしているよ。」
「どうして?」
「王子の声を聞けば、彼女は戻ってくるんじゃないかって」

それを聞いた王子は大きな声で歌いました。
来る日も来る日も。

その声は街の中にも届きました。
あの男の子が王子だったと知ると街の人はびっくりしましたが、
その悲しくて美しい愛のうたを邪魔することはできませんでした。

休まず歌い続けた王子の声は、だんだんかすれていきました。
まだ女の子はみつかりません。
王子はそれでも必死に歌いました。
どんなにのどが痛くても。
街中の人は止めようとしました。
しかし、王子は歌うことをやめませんでした。

王子の声はとうとう、小鳥の声に負けてしまうほどしか出なくなりました。
それでも歌っていた王子のもとに、ついに彼女が現れたのです。
王子は彼女に声をかけようとしました。
しかし、王子は声を出すことができなくなってしまっていたのです。
女の子がどこかにいってしまう!
そう思った王子は彼女のもとへ走りました。
すると、彼女が王子のほうに振り向いたのです!

王子と女の子は目をあわせました。
そして女の子は言いました。
「ようやく見つけたわ。あなただったのね」
王子はおどろきました。
彼女は目が見えるようになっていたのです。

声の出ない王子に、彼女は話しました。
「声を聞かなくてもわかるわ。
 あなたに会いたかったの。
 でも、光のある世界を歩くのはたいへんだった。
 だから道に迷ってしまったの。」
光の宿った彼女の目からは、キラキラと涙がこぼれました。
「だけど、あなたの声をたどってここまでこれたのよ」

その日から、街中には王子のやさしい歌声が絶えることはありませんでした。




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